【論文掲載】油脂の脂肪酸組成が3-MCPDエステルおよびグリシジルエステル生成に及ぼす影響を解明!

当研究室の岡田圭史さん(修士二年生)の修士研究が、国際学術誌 LWT – Food Science and Technology(Elsevier, IF = 6.6)に掲載されました!

K. Okada, A. Yoshinaga-Kiriake, S. Suzuki, Y. Suganuma, S. Tanaka, N. Gotoh, K. Yoshinaga.
Effects of fatty acids found in diacylglycerols and monoacylglycerols on the formation of 3-monochloropropane-1,2-diol esters and glycidyl esters during heating.
LWT 235 (2025) 118642. https://doi.org/10.1016/j.lwt.2025.118642


🔬 研究の概要

3-MCPDエステルおよびグリシジルエステルは、食用油の精製過程(特に脱臭工程)により生成する有害汚染物質として知られています。
本研究では、ジアシルグリセロール(DAG)およびモノアシルグリセロール(MAG)を前駆体とし、安定同位体標識(重水素標識)脂肪酸を導入したモデル実験系を構築。LC–MS/MS解析を組み合わせ、脂肪酸種(ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、α-リノレン酸)ごとに3-MCPDエステルおよびGEの生成挙動を定量的に評価しました。


🧪 主な成果

  • DAG由来の3-MCPDエステルおよびGE生成量は、MAG由来より一貫して高いことを確認。

  • リノール酸を含むDAGから最も多くの3-MCPDジエステルおよびGEが生成し、α-リノレン酸では熱分解により生成量が低下。

  • 塩化物の添加により、3-MCPDエステルおよびGE生成が顕著に促進

  • 脂肪酸の不飽和度が高いほど汚染物質の生成を助長し、特にDAG中の脂肪酸構造が生成量を大きく左右することを解明。


🌱 学術的・社会的意義

本研究により、食用油精製中における3-MCPDエステルおよびGE生成の分子機構が明確化され、
DAG量の抑制」および「塩化物源の低減」が有効な生成抑制策であることが実証されました。
この成果は、食用油の安全性向上および食品加工工程の最適化に向けた科学的根拠を提供するものであり、
食品科学・油化学・食品安全分野に大きな貢献を果たす研究成果です。