美味しさを科学する!
当研究室では、実際に料理を作りながら「美味しさの科学」を体験的に学ぶ取り組みを行っています。
今回は、学生が中心となって、ポテトパイとチャイを作り、食品化学的な視点でその仕組みを紐解いてみました。
■ ポテトパイづくり:サクサク食感はどこから生まれる?
パイ生地は、小麦粉(グルテン)と油脂を重ねて折り込む「多層構造」が特徴です。
焼成すると、層の中の水分が水蒸気となって膨らみ、油脂が溶けて層を分離します。
これにより、外側はサクサク、中はホクホクという心地よい食感が生まれます。
中に詰めたポテトフィリングは、加熱によってデンプンが糊化し、なめらかで優しい食感に。
パイ生地の香ばしさと、じゃがいもの自然な甘みがよく合うのは、油脂とデンプンの相性の良さが背景にあります。

■ チャイづくり:香りと渋味のバランス
続いて作ったのは、インド式ミルクティーの「チャイ」。
カルダモン、シナモン、クローブ、ジンジャーなどの スパイスを煮出して香気成分を抽出することで、華やかで立体的な香りが広がります。
一方で、茶葉を煮出すため、カテキンやカフェインがしっかり抽出され、渋味が強く出るのがチャイの特徴。
しかし牛乳を加えると、ミルク中のカゼインがカテキンと結合して渋味を抑制し、まろやかな味わいへと変化します。
“スパイスの香気 × 茶の渋味 × ミルクのまろやかさ”という、バランスの科学がチャイの美味しさを形づくっています。

■ 料理は「実験」でもある
今回の調理実習を通して、改めて感じたのは、料理そのものが食品科学の実験になっているということです。
私たちは、食品の化学現象を“論文だけでなく、実際の味として理解する”ことを大切にしています。
これからも、料理を通して美味しさの仕組みを楽しく学ぶ活動を行っていきます。
次回は、別の料理の科学にも挑戦する予定です。どうぞお楽しみに!
吉永

