【もうすぐバレンタイン】チョコレートの最新特許を読み解く
皆さんは、明治の「生のとき」というチョコレート(注1)をご存知でしょうか?
この「生のとき」は、常温保存が可能で、賞味期限が12カ月と長期間です。それにもかかわらず、生チョコレートのような柔らかい食感と濃厚な味わいを実現した製品です。

本来、生チョコレートは、生クリーム由来のなめらかな口どけが魅力の一つですが、その一方で保存性が低いという弱点があります。
これは、生チョコレートの水分含量が高いことに起因します。水分が多いと水分活性(注2)が高くなり、微生物が増殖しやすくなります。
そのため、冷蔵保存が必須となり、賞味期限も短くなります。
これらの理由から、「水分を多く含む生チョコレートのような製品は扱いにくい」というのが、これまでの常識でした。
では、なぜ「生のとき」は、常温で長期保存できるにもかかわらず、生チョコレートのような柔らかい食感を実現できたのでしょうか?
その鍵となるのが、「生ねり製法」と呼ばれる技術(特許第7404270号)です。
この特許の最大の特徴は、チョコレート原料と水分を低温で冷却しながら混練するという製造方法にあります。
低温条件下では、ココアバターなどの油脂は固体に近い状態となります。この状態で水分と混合することで、油脂が微細な結晶構造を形成し、水分がその構造内部に取り込まれます。
その結果、水分を3〜20%含んでいても、水分活性は0.7以下に抑えられ、微生物増殖が抑制された保存性の高い食品となります。
さらに、水分を含むことで、味や香りの感じ方も生チョコレートに近づくと考えられます。
この特許は、食品の内部構造を設計することで機能を生み出すという、食品研究の面白さをよく示している例だと感じます。
いやー、食品開発って本当に奥が深いですね!
吉永
注1)「生のとき」は水分を約3〜10%含みます。現在の公正競争規約では、チョコレート中の水分は3%以下と定められているため、「生のとき」の種類別名称は「チョコレート」ではなく「菓子」となります。
注2)水分活性(Aw)とは、食品中の水分のうち、微生物の増殖や化学反応に利用されやすい「自由な水」の割合を示す指標です。水分活性の値は0から1の範囲にあり、自由水が多いほど1.0に近づきます。

