高カカオチョコレートを食べ比べ!香りの違いをGC-MSで分析してみました!
研究室で、明治の高カカオチョコレート(カカオ72%、86%、95%)の食べ比べを行いました。

最初は、
「カカオ分が違うとはいえ、何人かは間違えるだろう」
と思っていたのですが……
結果は、まさかの全員正解!
みんな、ばかにしてごめんなさい(笑)。
甘味や苦味だけでなく、香りの違いもしっかり感じ取っていたようです。
3種類ともそれぞれ違った魅力があり、どれもおいしかったです。
学生たちからはさまざまな意見が飛び交いました。
「論文を書く前に集中したいときはカカオ95%!」
「実験の合間にリラックスしたいならカカオ72%。」
「カカオ86%は気分を切り替えたいときに食べたい。」
など、それぞれのチョコレートに合うシチュエーションについての議論が白熱しました。
味や香りの違いは、単に「好き・嫌い」だけではなく、食べる場面や気分のイメージにも影響するのだと実感しました。
そこで、香りを科学的に調べてみることに...
研究室らしく、ガスクロマトグラフィー質量分析計(GC-MS)を用いて、それぞれのチョコレートの香気成分を分析しました(図1)。
商品のパッケージにはそれぞれ、
カカオ72%:「華やかな香り」
カカオ86%:「力強い香り」
カカオ95%:「豊かな香り」
という特徴が記載されています。
果たして、機器分析でもその違いは見えてくるのでしょうか。

図1 高カカオチョコレートの香気成分の比較(カカオ95%のピーク面積を100%とした際の相対値)
カカオ72% ― 「華やかな香り」
カカオ72%では、リナロール(Linalool)、オクタン酸エチル(Ethyl octanoate)、バニリン(Vanillin)などが比較的高く検出されました。
リナロールは花のような香り、オクタン酸エチルはフルーティーな香り、バニリンは甘いバニラ様香気をもつ成分として知られています。
これらの成分が組み合わさることで、パッケージに書かれている「華やかな香り」という表現につながっているのかもしれません。
カカオ86% ― 「力強い香り」
カカオ86%で特に目立ったのは、2,5-ジメチルピラジン(2,5-Dimethylpyrazine)や2,6-ジメチルピラジン(2,6-Dimethylpyrazine)などのピラジン類でした。
ピラジン類は、チョコレートやコーヒー、焙煎ナッツなどにも含まれる、ロースト香を特徴づける代表的な香気成分です。
特に2,5-ジメチルピラジンは、95%を100とすると約2.5倍という高い値を示しました。
香ばしさや焙煎感が際立ち、「力強い香り」という表現にも納得できる結果でした。
カカオ95% ― 「豊かな香り」
カカオ95%では、2-メチルブタナール(2-Methyl butanol)やフェネチルアルコール(Phenethyl alcohol)、ベンズアルデヒド(Benzaldehyde)、さらに酢酸(Acetic acid)など、複数の香気成分が相対的に高く検出されました。
一つの成分が突出しているというより、多様な香気成分が組み合わさることで、「豊かな香り」を生み出しているように感じられます。
また、食べ比べでは多くの学生が、「カカオ95%は少し酸味を感じる」という感想を話していました。
今回の分析では95%で酢酸が相対的に高く検出されています。酢酸は食酢の主成分として知られ、酸味や酢様の香りに関与する揮発性成分です。
そのため、学生が感じた酸味の印象には、この酢酸が何らかの形で関与しているのかもしれません。
もちろん、酸味は酢酸だけで決まるものではありませんが、官能評価で感じた印象と機器分析の結果を結び付けて考察できるのは、食品科学の醍醐味の一つです!
香りは「チョコレートの個性」
今回の分析で最も印象的だったのは、「カカオ分が多いほど香りが強い」という単純な話ではなかったという点です。
カカオ72%、86%、95%、それぞれに異なる個性があり、その違いを学生全員が食べ比べで見分けられたことにも納得しました。
「どれが一番おいしい?」という問いに答えはありません。
その日の気分やシチュエーションによって選びたくなるチョコレートが変わる。
「おいしい」の裏側には、たくさんの化学があります。
味や香りを感じるだけでなく、その理由を分析して考える。
そんな研究室らしい、おいしくて楽しい実験になりました。
吉永

